後編では「道然寺さん」の装画、卒業制作のアニメーションについて語っていただきました。アニメーションについてはインタビューの最後にご紹介しておりますので、ぜひご覧ください!
『道然寺さんの双子探偵』2作目のイラスト制作秘話
―1巻と今回の2巻と少し雰囲気が違う感じがしますが、なぜこのようなカバーになったのでしょうか?
1巻に関しては双子、舞台がストレートに見えてくる絵作りを意識して作りました。2巻目に関しては同じ人物が活躍すると思うんですけれども、1巻との一番の違いは話が熊本の地震をテーマに、いろんな人が地震、復興に対してどう思っているのか、経験したのかが軸になっていると思いました。そこが最大の違いだと思うので、単純に1巻の続きで二人が見えてきて…だと話の内容とは食い違ってきてしまうかなと、そこは変えようと思っていました。打ち合わせのときには、編集さんがヒマワリがバーッと咲いたイメージでとお話されたのですが、僕がゲラを読んだ印象では少し憂いの表情、少し影がありつつも希望がさしてくるようなイメージが今回の作品には合ってくるのかなと思って。もしヒマワリのラフを切っても、おそらく編集さんのほうでイメージが違うなと感じられるかと思って、こういう雰囲気を提案しました。そのイメージを提案した後からはアサガオにしようとか、アイデアが出てきて話が進みましたね。
―もし明るい感じでと編集さんから言われた場合はどうしますか?
編集さんやデザイナーさんたちの話し方や雰囲気で、本当にこのイメージが見たい!ってなったら何となく察しはつくので、「じゃあ、ちょっと違うパターン、イメージで作ってみますね」ってラフを一点出してみます。 今回の場合は地震という大きな主軸があったので大きくブレることはないと思ったんですが、もっと幅のある作品だと、明るいものや影のあるものの色を提示してどれがいいですか、どの組み合わせで行きましょうか、という流れになると思います。
―「道然寺さん」2巻目のイラストの見どころは何でしょう?
まず街を見下ろす二人、そして地震があって、その夜明けの街を見たときの二人は何を思うのかすごく描きたくて。テーマとしては重いんですけども、ただ重くしてしまうと、商業として並ぶにはクセが強くなって、人を選び過ぎてしまうところがありますので…。
―手に取ってもらう人の間口を狭めるということですね。
そうですね、それに作品の内容にも合わないかなと。もっとダークな話だったらどんどん暗くしていけばいいんですけど、今回の作品は地震があって悲しい思いをして、いろいろなドラマがあって、重い題材を取り扱ってはいるんですけど、それを解決する…どう前を向いていくかというのが、ゴール地点であるなと。それは絵でも表現したいし、そっちの方が見る人にとってはプラスの感情に取りやすいのかなと思って。
―今回はなかなか難しいんだろうと思っていたら、求めていたものがこれだと分かるのが来てて驚きました。
基本的には外さないですね、やっぱり並んで見たときにどう見えてくるかと。シリーズで揃えている方がいたら、やっぱり絵の雰囲気は統一した方がいいのかなと思います。
卒業制作のアニメーション『微睡みのヴェヴァラ』
―卒業制作は一人で取り組まれたんですよね?何分のアニメーションを作られたのでしょうか?
映像に関しては一人ですね、あれは10分3秒です。発想に関しては5月の末にようやく最初の原型みたいなものが思いついて結構切羽詰まってたんです(笑)。
―前から温めていたものではなく?
ふと思いついたんです(笑)。一昨年の末くらいから、来年一年は集中して卒業制作でアニメーションを作りたいなと思って、いろいろ案を出してはいたんですが、先ほどの話にあったようにちょっと人を選び過ぎる、これは自分に寄りすぎてるなと。こんなSF作ってどうするのか?と。たぶん、自分で責任取れる範囲が10分くらいだなと思って、そこに収まるようにボツにボツを重ねて。大学で中間発表の3日前くらいにポッと思い浮かびました。10分くらいで作れるか作れないかは正直分からなかったんですが…(笑)
―アニメーションはどのように勉強したのでしょうか?
大学ではなく、聞いたり見たり、ひたすら検索です。やってる方のYouTubeで見たりですね。その人たちにコンタクト取ったりもなかったです。
―後々、アニメーターになっていく可能性もありそうですか?
あまり特定の職業になりたいわけでもないですね。映像はもちろん作りたいですけれども。ずっとアニメーターをやりたいわけでもなくて。
―今やりたいことがこれだったと。
今やりたいことをちゃんとできるようにするために、絵の技術上げたりとか、勉強し続けるのは基本スタンスで、新しい技術とか新しい表現が出てきたら、すぐに反応できるようにいたいとは思います。
―声優さんもプロの方ですね?どのようにしてお願いできたのでしょうか?
一昨年の末くらいに仕事の関係でアニメの関係者の方とお話してて、卒業制作でアニメーション作りたいんですと話したら、声優の面で協力できますよとお話いただけて、それでしたらぜひぜひお願いします!と。
―そのとき声優さんたちは、このアニメ見てるわけではなかったんでしょう!?
ちゃんと見てないのに…そうですね、自分でもすごいなと(笑)。
―人との縁にも恵まれているんですね。
そうですね、それは感じますね、自分の実力以上に運とか。アニメの関係者の方も、以前、小説で挿画を描かせていただいた編集さんの親しい方で、その方の紹介でお会いして、いろいろお話していくうちに…仕事に繋がったり。本当にいろんな運があるんだなと。
―イラストとアニメの表現方法、考え方の違いなどお聞かせください。
さっきも言ったように、僕はイラストにも前後の動きとか物語があることが絶対だと思うんですけど、基本的にイラストを描く際も、もしかしたらアニメにできる内容を描いています。僕の場合はアニメとイラストの違いはそこまでなく、動いているか動いていないか、説明しているか説明していないか、の違いくらいしか実はないかなと。
―イラストを作る時にも例えば、アニメの1シーンをとらえたことに過ぎないのかもしれないと考えると。本質的なことは変わらないでしょうけれども、アニメの方が絵が多い分大変ですよね。
だいぶ大変ですね、やはりアニメーションの場合はレンダーしないといけないじゃないですか。イラストは描けばできますけど…。
―いまはPCの精度も上がっているので書き出しもまだ楽になったかもしれませんが、エフェクトとかかけると重くなりますよね。私も3DCG、映像も少しやっていたので…。
ものによってはだいぶ…。レンダーかけるのも重くなるだろうなと思うと、ここらへんが一番重かったですね。ここがアフターエフェクト上の3Dレイヤーみたいなもので組み込んでしまったので、疑似3Dみたいな表現をしているんです。
―全部自分で描いたものを使っているんですか?
そうですね、自分で描いて配置しています。このときはまだ3Dソフトを全然使えてなくて、レイヤー上で奥行きを出して疑似的に立体化していって影つけてやっているんで、それが重かったかなと思います。レンダーをかけて短くて3時間くらい…。
―そのシーンって何秒くらいですか?
これは20秒くらいですね。
―20秒をレンダー3時間で…落ちたら大変ですね。またかけ直しするのは苦痛ですね…。
まぁ落ちなければ。本当にそうですね。
―それを繰り返すとなったら、やっぱり10分を作るとなると失敗してもう一度作り直したりは相当時間がかかりますね。
3時間で終わればいいんですけど、それを確認して動きが全然違うとなったら、もう一回書き出さなきゃいけない。
―それを聞いて思うのが、この10分は相当大変だったんだなと。仕事しながらだと特に…!
今後について
―今後やってみたいこと、活動についてお聞かせいただければと思います。
大学院に入ったら集中的にアニメーションを作れる環境が揃っていて、専門的な機材もあってより深く学べるのでそれはすごい楽しみです。今回エフェクトでノイズとか使ってフィルムっぽい表現も取り入れたのですが、それはやりたかった表現で、商業ではあまりやれてこなかったんですけども、今回卒業制作でやれたので、そういうものを活かしてやりたいなと思うのはあります。
―今回はほんとにありがとうございました。syo5さんのように学生から活躍する人や、デジタルですぐにでも活躍できる人がさらに増えていきそうな波を感じさせられました。イラストレーターという職種から、キャラクターデザイン、アニメーションまでの間口は広く、これからのムーブメントを多くの若い人が作っていく気がします。これからのご活躍も楽しみにしております!
syo5[ショウゴ]
イラストレーター。主に書籍の装画やアニメーションのイメージボードを中心に活動中。
アニメーション、映像作品の表現を意識した時間の流れ、物語性、世界観の強い作風を好む。
「道然寺さんの双子探偵」シリーズ「最後の医者は桜を見上げて君を想う」(二宮敦人氏、TO文庫)など。
http://syo–5.wixsite.com/syo5
機材/ソフト
iMac,wacom cintiq 13HD(インタビュー当時)
photoshop
「微睡みのヴェヴァラ」
あらすじ
13歳の少女・サナはある日から眠るたびに同じ夢を見るようになる。
ヴェヴァラと過ごす夢。”描(えが)いた”ものが映し出される不思議な夢。
楽しげに夢を描くヴェヴァラと
夢を描けなくなった少女。
二人の物語が始まる。
2019/7/10にyoutubeで公開されました!
https://youtu.be/z4lIbrUPcag
interviewer:松 昭教