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「提案型のデザイナー」と評される築地さんは、どのような思いでデザインに取り組んでいるのでしょうか。

-築地さんがデザインという仕事に興味を持ったのはなぜでしょうか?

 

2005年に、ロアルド・ダールという作家の著作が新装版(ロアルド・ダール コレクション)として発売されたんですが、そのときに今まで発売されていたダールの既刊の表紙イラストを一人のイラストレーターに統一したんです。その時表紙を飾ったのがクェンティン・ブレイクという方でした。もちろん他にもたくさんのイラストレーターがダールの装画をしていたのですが、私の中でずっと「ロアルド・ダールを読むならクェンティン・ブレイクの絵で!」という思いがあったので、そのペアによる新装版が出た時、本当にうれしくて。そういったマッチングの楽しさも含めて、本の持つイメージをどう表現するかという目線で考えるようになったのが、デザインに興味をもつことになったきっかけの1つですね。

それから、大学ではグラフィックデザインを専攻しました。多くの場合、グラフィックデザイン科を出た学生は広告業界を目指す人が多いと思っていたのですが、私はあまり広告に興味がなくて…。というより、広告に関するアイデアが出なかったんですよね。
でも、大学3年生のときにブックデザインの授業があったり、そこではアイデアもたくさん出せ、先生の評価もいただけ、何よりすごく楽しめている自分がいました。ただ文字を組むだけじゃなくて、その本のタイトル、内容からがどんな声色なのかどんな姿をしているのかを想像して、デザインに落とし込んでいくという作業が好きだったんです。

-そこで広告よりも書籍が合っていると思ったんですね。
 

そうですね。ただ、ブックデザインの会社は新卒で入るには狭き門かなと思っていたので、就職活動のときは広告系の会社を受けました。でもやっぱり、エントリーシートも書けないし、面接もうまくいかないし…。人生で一番、肌荒れしました(笑)。
周りの友人が徐々に就職を決めていくなか、少しずつ焦りは感じていました。それでも最終的には開き直って、ブックデザイナーの職を探しました。bookwallに出会ったのは、もう卒業旅行の後でしたね。

 
-bookwallの印象はどうでしたか?
 

自分が好きな作家さんの本もありましたし、デザインの感じも好きでした。シカのキャラクターに親しみを持てたこともありましたね(笑)。
でも一番は、作品をちゃんと見てもらえたところです。いわゆる就職面接は得意ではなかったのですが、自分の作るものには自信があったので、そこを第一に評価してもらえたのはとてもうれしかったです。

-それから入社して4年目になると思いますが、実際にブックデザイナーとして仕事をしてみていかがですか?
 

入社後は代表の松さんと一緒に仕事を進めることが多いのですが、松さんはそれぞれのデザイナーに「考えること」を求めていて、そのぶん相談に乗ってくれますし、良いアイデアはちゃんと採用してくれます。
以前、松さんが「提案型のタイプ」と評価してくれたのもあって、だからこそ自分のアイデアが採用されたときはうれしいですし、やりがいを感じますね。

 
-なるほど。ただ、いつも自分の提案が通るわけではないですよね。
 

もちろん、そういうときもあります。セオリーを守るべきか、奇抜なアイデアを試すべきか、そもそもの答えがないものですし。ただ、それは一方で、自分自身の信頼度がまだまだ足りていないのかなと思っています。
少し前に、住野よるさんの「君の膵臓を食べたい」というヒット作に携わることができたのですが、それをきっかけに編集者の方から少しずつ信頼してもらえるようになったんです。デザイナーとして信頼されていれば、こちらの思いも伝えやすくなって、コミュニケーションの密度が高まっていきますよね。提案のクオリティもそうやって上がっていくものだと思います。

 
-信頼を勝ち取るためには、どんなことが必要でしょうか?
 

結局は一つひとつの仕事と丁寧に向き合って、実績を積み重ねていくしかないと思っています。以前、編集者の方から仕事の丁寧さを褒めていただいたことがあって、自分としてもすごくうれしかったんです。それもあって、今はとにかく、丁寧な仕事を心がけるようにしています。

デザイナー 築地 亜希乃
1991年生まれ。長崎県出身。東京造形大学造形学部デザイン学科グラフィックデザイン専攻卒。好きな作家は森見登美彦。小学生の頃から大好きなクレヨンしんちゃんに関する仕事、お待ちしています。