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bookwallの鹿のマスコットキャラクター、ジョバンニの人形を手掛けてくださっているサカモトキョーコさんにジョバンニの制作秘話をお聞きしました。

―始まりは、桂望実さん著「ハタラクオトメ」(幻冬舎)の装丁をしているときでした。
 
「ハタラクオトメ」のカバー用に人形を作っていたら、当時の担当編集者さんも人形が欲しいとおっしゃって、そこで松さんがbookwallも鹿のキャラクターロゴだし、それも人形にしてほしいという話になったのが始まりでした。名刺をいただいていて、その絵をもとに作りました。
 
―これまでにたくさんジョバンニを作っていただきましたが、これは型かなにかあるのでしょうか?
 
最初はこんなに量産する予定ではなかったので、型がないんですよ。設計図はあるんですが、まったく同じものにはならないですね。1個1個、よくみると差があるんです。
 
 
―1つ1つよく見ると顔が違いますね。
 
自分の手元に初代のジョバンニを置いていなかったので、こんなに違っているとは私も今気づきました。なのでジョバンニ一族だと思ってもらえれば…。
 
―1体を作る流れはどのようになっているのでしょうか?
 
まずはハリガネで体の軸を作るんです。その軸にアルミホイルを巻き付けて、さらに細めのハリガネでアルミホイルを固定します。そのあとポーズを決めて、石粉粘土で肉付けをします。自然乾燥させるのに1日~3日ほどかかります。今のジョバンニは石粉粘土で作っていますが、前のものはスカルピーという素材で作っていました。
 
―スカルピーと石粉粘土の違いってなんですか?
 
削れば違いがわかります。スカルピーには柔らかくする薬品が入っていて、それが手につくと良くないので手袋が必須なんです。私は健康的な石粉粘土を選んでいます(笑)。スカルピーはオーブンで焼くのですが石粉粘土は自然乾燥で芯まで乾かす必要があるので、時間がかかるんです。原型師はスカルピーか石粉粘土のどちらかに分かれると思います。
石粉粘土を乾燥させた後は、彫刻刀などで削り出しと盛り足しをします。削り出しはとても楽しいんですよね。やすりをしなくてもいいくらいに削ります。それでもやっぱり、やすりがけは必要なんですけどね(笑)。
 
 
―こんな風にやすりがけをされているんですね!この箱もご自分で作られたものですか?
 
はい。やすりがけが結構大変で…。粉がすごく舞うので、段ボールの横に丸く穴をあけて、中が見えるように上には使わなくなったスキャナーの天板をはめ込んだ、特性やすりがけBOXです(笑)。やすりがけには1体30分以上かかりますね。そのあとジェッソ(アクリル絵の具用の下地剤)という下地を塗って、さらにやすりをかけるんです。塗る前に完璧に仕上げておかないといけないんですよね。
 
―こだわりが強いんですね。
 
これでもいいかなっていうので進めてしまうと、やっぱり気に入らなくなって、剥がしてまたやすりをかけて…ということになるので、最初の段階で仕上げる必要があるんです。やするのは大変で時間もかかりますが、そのあと色を塗っていくと形になってきたな、という感覚がうまれるんです。そこからは楽しいですね。塗りだすと早いです。
 
―1体にかかる制作時間はどのくらいですか?
 
昔は3日くらいで作っていましたが、最近は気分ですね(笑)。1年に100体くらい作っていた時期もありましたが、今は気分がのらない日はつくらない時もあります。形というか、全体的に可愛いと思うものは、はやく作りたいと思うんですよね。最近作ったこれ(下画像)は、本当に可愛くて楽しいです。パターンが楽しくなってきて、ずっとやっています。
 
 
―2017年版ジョバンニを作っていて気に入っているものはどれですか?
 
鬼もまたぎもかわいいですね。カエルも好きです。相棒がいたらいいなぁと思って、カエルを作りました。またぎはブラックユーモアが入ってます。鹿が猟銃っていう。
 
 
―マンボも可愛いですね。
 
マンボは最初、甲冑を着せて兜をのせようとしていたんですよ。兜だとすっぽりかぶってしまって、ジョバンニだということがわからなくなってしまうので。甲冑とは違うなにか昔っぽいものを作ろうと思って、マンボになりました。宇宙アストロボーイみたいなのも考えたんですけど、それも顔を覆ってしまうのでやめました。
 
―昔と比較して制作ペースが変わったようですが、この数年で心境の変化があったのでしょうか?
 
生活リズムを変えたことが大きいかもしれません。以前までは夜型の生活をしていたのですが、最近は毎朝8時30分には起きています(笑)。散歩にハマっていて、1日5キロくらい歩かないと気がすまなくなりました(笑)。
 
―健康的な生活になったきっかけは何だったのでしょう?
 
もともと健康志向ではあったんです。引っ越した時のことですが、夜に作業をしていたら、うるさいといわれてしまって、それで朝早く起きて作業しようと始めたのがきっかけですね。でも夜型の頃に比べると、制作ペースが落ちました(笑)。夜型の頃はその日のうちに出来ていたのに、今はクリエイティブさが健康に向いてしまっていて(笑)。クリエイターは夜型の方がいいのかもしれませんね。私も夜型の頃は1週間くらいで作ってましたね。夜中に徹夜して作ったり…。でもそれでは長く続けられないなと思ったんです。あのまま続けてたら40歳になる前に死んでしまう気がして。作り手は運動する時間がなかなか無くて、そのストレスが食べる方に向いてしまって、悪循環になっていると思うんです。私は細く長く生きたいなと…(笑)。
 
―生活リズムを変えたり、ギアチェンジをされたときに不安はありませんでしたか?
 
もちろん制作ペースが落ちると、収入にも関わってくるんですが、それでもいいかな、と思ったんです。健康が一番ですからね。今はとりあえず生きてるので。現在は種をたくさん撒いている段階なんです。勉強の年だと思っています。
 
 

サカモトキョーコ(人形作家、イラストレーター)1981年生まれ。年に数回の個展の他、書籍装画やグッズの作成などを手がける。
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