特集記事

FEATURE
Pocket

今回は続々と増刷され、反響を呼んでいる『少女を殺す100の方法』の装丁を担当された上原さんにお話をお伺いしました。

─この作品のタイトルからデザインを起こすとなると、かなり悩んだのではないかと思うのですが、どのようにデザインに落とし込んだのですか?

タイトルを聞いた時に、かなり読み手を選びそうだなと感じたので、なるべく手に取りやすいデザインにしようと思っていたんです。このタイトルから「怖い」「グロい」というイメージが先行してしまいそうだったので、あえてタイトルを小さくして帯文言を大きくしました。「14歳は可愛い」という文言を大きくして目に留まるようにし、その次に「殺したいほど」という文言をやや小さい文字で赤字で書いてあることに気付いてもらって、何の本なのだろうという疑問を持って欲しかったんです。そこからタイトルに誘導できればなと。
 

─今回イラストを使用していますが、最初からこのイメージがあったのでしょうか?

最初は、「今にも殺されそうな女の子を描いてもらおう」などの案もありましたが、今回は手に取りやすいデザインにするために、装画を担当された浅野いにおさんには笑っている少女を描いてもらったんです。その方がギャップがあって良いかなと思って。帯を取ると少女が抱えている100本の薔薇がブワッと散っているという仕掛けになっているんです。
 

─このイラストの提案は上原さんがされたんですか?

そうです。一見シンプルに見えるデザインなので、どこかでギョッとしてもらいたいという思いがあったんです。内容とリンクさせるために薔薇というモチーフを選びました。
少女が持つ100本の薔薇は登場する100人の少女の命を、帯を取った時にその薔薇が一斉に散る様が血飛沫のように見えるようにと提案しました。初めは帯を外した時の仕掛けを、足元の影を無くして死のイメージをリンクさせようか、など他にも考えていたのですが、薔薇を持たせるという答えにたどり着いたときはイメージにピッタリとハマったので、嬉しかったですね。
 

─他にもこだわりのポイントはありますか?

このタイトル、よく見ると文字のバランスがおかしいんですよ。パーツをバラして、表紙の舞い散った花びらの隙間のイメージに合わせて、文字にも隙間を作りました。
カバーと帯には触れた時に違和感から気持ち悪さを感じてもらえるようにサガンを採用しています。化粧扉には、表紙の少女が着ているワンピースの手触りのイメージになればと思い、少し半透明な白銀という紙を使用しています。白で統一され全体的にシンプルに見えつつも、手に取ってよく見るとゾッとするような気持ち悪さや、肌で違和感を覚えてもらえるように紙の素材や色にもこだわっています。
 

─各書店での冊子も手がけられていますよね。こちらはどのようなこだわりや工夫がこどこされているのでしょうか?

限定感を出すために、そのお店ごとのデザインを使い出来る限りパロディに仕上げました。ただパロディだけにすると書籍との印象が変わりすぎてしまうため、薔薇の花びらを散らすというモチーフは統一しています。そのお店で見慣れているデザインにバラが散らされているというヴィジュアルの組み合わせで気を引き、通常との違いを出して手に取ってもらえるように工夫しました。実際にあるお店のパロディなので、薔薇もイラストではなく写真を使用しました。
 

─各書店のこだわりを教えてください。

こちらはヴィレッジヴァンガードさん限定の販促用冊子です。

小説の内容もPOPが関係する話なので、ヴィレッジヴァンガードさんでよく見かけるPOPをデザインに取り入れました。ヴィレッジヴァンガードさんでたまに見る、小さく一言だけ書いてあるPOPが好きなので、著者名の部分はそれを意識して作っています。分かる人いますかね…。

こちらはときわ書房さん限定の販促用冊子です。

実際の売上カードをグシャグシャにしてスキャンしたものを素材にしました。今回だけに限らず、デザインする時には、出来るだけPC内で完結しないようにアナログ要素を取り入れるように心がけています。

こちらは紀伊国屋書店さん限定の冊子です。

紀伊国屋書店さんのブックカバーを使用しています。裏面がかなり汚れているデザインになっているので、それを見た時に少し嫌な気持ちになってもらえればいいな、と思いながら作りました。ロゴに通常にはない薔薇をあしらっているのもポイントですね。
 

─今後どのようなデザインを手がけていきたいですか?

表1は初めて目にする方へ向けて作っていますが、そのほかの部分で自分のこだわりや読んだ人にしかわからない仕掛けを作ったり、特に表紙はカバーをそのまま使うのではなく、開いたときの驚きや本の内容と関連付けられるように、何案もラフを作るようにしています。そういった仕掛けで、見た人の目に留まるようなデザインを盛り込んでいきたいと思っています。デジタルで全て完結できてしまいそうな時代ですがアナログ的な要素や作業に出来るだけ時間をかけてやれるようにしたいですね。

 

 

『少女を殺す100の方法』制作実績ページ
デザイナー 上原インタビュー記事