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「ジャック・オー・ランド ユーリと魔物の笛」のデザインを担当された、長崎さんにデザインについてお話をお聞きしました。

-今までアナログ的な作業をしてデザインをした経験があまりないということですが、アナログ的作業でデザインするうえでデジタルとの差はどのようなことですか?

デジタルで文字を作る時は、ある程度の完成形が頭の中にあって作っていくことが多いです。アナログは良い意味で行き当たりばったりでした。とりあえず書いてみた文字の流れが意外に良かったり…。デジタルの範疇では思いつかないような流れや形が作れるのはアナログならではなんだと思います。

 

-アナログならではの良い点、デジタルでの良い点はどういうところでしょうか?

アナログは自由度が高いので、それがオリジナリティにも繫がります。あとはアナログならではの質感というか、デザインに落とし込んだ時に暖かみであったり、馴染みやすさを引き出してくれる気がします。デジタルは形、色にしても様々なパターンを検討できます。良い所を残しながらも細かい再現や作り込みで、また違ったデザインを広げられるというところがデジタルの良い点だと思います。
 

-この作品の見てほしいポイントはどこですか?

今回イラスト周り、背景からシルエットに関してはこちらでデザインを加えさせていただきました。絵本だけど洋書のような、表1含む全体を革装のようなデザインにして、他の絵本とは少し違ったカバーを目指しました。この革装の素材も実はスタッフのかばんをスキャンして作ったものだったりします。イラストとデザインが融合したカバーは是非とも隅々まで見て欲しいです。
 

-表1(*1)カバーの枝のシルエットを作るにあたって、注意したことなんでしょうか?

メインはイラストなので、あくまでもそこに付随するものとしてそれより目立ってはいけないし、そうは言ってもさらに子どもの目を引くような賑やかさは欲しくて…イラストがタイトル周り、円に添った構図なので、それを邪魔しないように枠も角アールを意識して作っていきました。

 

-本文も手がけておられますが、デザインで工夫された点はどこですか?

本文には全体に特色のオレンジを2%敷いています。紙って光で焼けてだんだん変色していきますよね。特別意識はしなくてもそこで本の歴史というか、年月を感じたりすることができます。今回は子どもはもちろん、大人の方にも読んで欲しい本だったので、あえて初めからその要素を加えました。そうすることで昔から慣れ親しんだ本ような、手に馴染む感触を本文からも感じてもらえたら嬉しいです。
 

-カバー、帯、表紙など、紙の選択はどのようにしましたか?またそれはなぜこの用紙になったのでしょうか? 

カバーはヴァンヌーボを使用しました。コート紙も候補にありましたが革装風のデザインにしたこともあって、手に取った時の質感が欲しいなと。帯はカバーとは切り離して、広告として目立つようにコート紙にしています。表紙は本文と合わせて見た時に、より古書らしい印象になるようブンペルにしました。

 

-これまでの作品の作り方と違うと思いますが、今後活かしていこうというところがありましたか?

アナログは手間も時間もかかる作業ですが、文字、イラストに対するアプローチの幅が広がりました。デザインするときの基本作業がデジタルなのでその中でできることを探しがちですが、その枠にはとらわれずデザインを提案していけたらと思います。
 
 

(*1)…カバーのおもて面のこと

 

デザイナー 長崎のインタビュー記事はこちら
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